ちょっと違和感がありますよね。そうです。AIによる作成画像です。
技能実習生は3年ないしは1年で終わり、帰国することが制度上定められています。帰国ということは、退職しますし、会社の寮も出ますし、住民票も日本からなくなります。更にいうと、年金からも脱退ですし、健康保険からも脱退です。
必ず帰国をさせる理由を説明します。建前の理由は日本の高度な技術を母国に移転するためです。技能実習を英語でいうと" Technical Intern Training "です。こう書くとかっこいいですね。テクニカルインターントレーニング……こう聞くと技術を学ぶという印象で「出稼ぎ労働」という印象はありませんね。
続いて、必ず帰国をさせる本音の理由です。本音は「外国人労働者の日本への定住を防ぐ」でしょう。大っぴらに書くと倫理的に問題があり、ためらってしまうでしょうが、本音はこれです。そんな理由じゃない!とおっしゃる人もいるでしょう。しかし、政府の方針はこの通りです。というのも、永住許可の要件に話は飛びます。永住の許可の要件には「10年間の日本への定住」があります。しかし、技能実習はこの10年間には参入されません。わざわざ技能実習が対象外とされています。技能実習生には日本に定住をしないで欲しいという方針の具体化です。
さて、タイトルの(けどしなくてもよくなったね)とは、どういうことなんだ、いい加減説明しろと思われているでしょう。大変長らくお待たせいたしました。ご説明いたします。2019年にスタートした『特定技能』という在留資格が原因です。『特定技能』は技能実習が無くなった後に、外国人雇用の中核を担う制度ですね。亡くなった安倍元首相の肝いりで法制度化されました。『特定技能』の説明はこの辺りで終わりにし『特定技能』の登場で『技能実習』の一時帰国が必須ではなくなりました。『技能実習』を終えた後に『特定技能』に在留資格を切り替えることで、そのまま連続的に日本での滞在を続けることができます。
まとめです。帰国は、技能実習生本人にとっては負担です。今では、本人の希望次第で帰国は必須ではなくなりました。しかし、これだけ法制度が変化します。技能実習生にとって法制度の理解を深めることは困難です。日本人にとっては、文字通り他人事ですが、実習生本人には負担としてのしかかっているんですね。以上、必ず帰国しなければならかった(けどしなくてもよくなったね)についてのご説明です。
2023/11/14
技能実習制度がなくなりますね。時に現代の奴隷制度と言われました。また、女性の技能実習生が出産した胎児を遺棄した、と痛ましい報道もありました。あらゆる立場の人から批判され、でも確かに日本社会を底支えしていたのが技能実習制度です。その技能実習制度の何が問題だったのかを改めて解説いたします。解説をするのはビザ手続きの専門家の行政書士の板垣岳人です。岡山で行政書士をやっています。
今回は以下の3つに絞って解説致します。
必ず帰国しなければならなかった(けどしなくてもよくなったね)
ただでさえ(外国人に)無い職業の選択の自由が更に無い!
家族を日本に呼べない
これら3つは技能実習生にとっての大きな負担としてのしかかっています。さて、技能実習制度が無くなって果たしてこの問題はどうなるのでしょうか?解決するのか、はたまた全く解決しないのか。要チェックです。
AIによる生成画像です。
AIによる生成画像です。
日本国憲法では22条にて職業選択の自由が定められています。しかし外国人には職業選択の自由がないのが実態です。その外国人の中でも、とりわけ転職の自由が極めて強く制限されているのが技能実習生です。この制限を緩くする方針を政府は検討しております。現在、技能実習制度廃止後の新制度の制度設計がされていますが、転職制限は緩めるのはほぼ確実のようです。今の転職制限はやり過ぎという認識のようですね。
転職が制限される理由について解説致します。
1. 入国にかかるコストを雇用主が負担しているから。
2. 「仕事を通した勉強」という建前のため、できる仕事の内容が細かく指定されているから。
3. そもそも技能実習生に関わらず外国人の就労は制限されているから。
1つ目の入国にかかるコストを雇用主が負担しているからについて説明します。3年間同じ職場で技能実習生に働いてもらって、生み出した富でそのコストを回収するスキームが形成されています。入国にかかるコストの内訳は、渡航費用・法律で定められた技能実習生への研修の費用・役所へ提出する膨大な資料の作成などです。ですから、転職をされてしまうとコストを負担した側はこう思うのです。「採用にかけたコストの回収ができない。技能実習生も転職先もただ乗りをしている。こんなのは割に合わない」確かに、筋が通っていると思いませんか。私は思います。
2つ目です。「仕事を通した勉強」なのですから、カリキュラムが定められていますよね。予め勉強する内容を届け出て、その内容に応じて入国許可がでるわけです。転職なんてしてしまったら、カリキュラムが崩れてしまうのです。カリキュラム通りに仕事をすることが入国の許可要件になっているわけですから、カリキュラムを崩すような転職は認めることができないのです。杓子定規ですが当然ですね。しかし、ここで視点を一つ広くしましょう。「仕事を通した勉強」が建前で、実際は労働者が欲しいだけだったとしたら……。そうですね、これが技能実習の本音と建前です。
3つ目はそもそも論です。そもそも、技能実習生に限らず外国人の就労は制限されています。大卒で専門的な知識を身につけている人であっても、働く上で、ケアしなければならない問題があります。それは、日本人には必要の無いものです。例えば、バイトは入管庁の許可が必要です。コンビニバイトはできません。専門知識を活かす仕事ではないからです。転職する際は入管庁に転職先の決算書を提出する必要があります。その理由は、やはり不法滞在の収入源となる不法就労を断つ、ということです。日本社会全体の安心のため、その先には国益があります。以上の例のように、技能実習生固有の転職の問題には、外国人労働者全体への転職制限の問題も入り組んでいるんですね。
まとめます。改めて見ますと、転職制限は技能実習生にとっては不利な制度でしかないですね。転職制限の恩恵を得るのは雇用主や日本全体です。
技能実習生への転職制限の理由について行政書士の視点で改めて整理いたしました。今回の技能実習制度廃止の核心部分が転職制限です。あなたの理解の足しになれば幸いです。
今回はここまでです。家族を呼べない以降はお待ち下さい。
2023/11/16
技能実習生は家族を招くことができません。「技能実習をきっかけに日本に移住をして、家族を招き、日本で定住をしたい……」そう考えている技能実習生は少なくありません。
どの時代でも、国境を超えた人生設計やキャリア形成ですよね。日本人でも、留学をきっかけに海外に移住をし、そのまま現地で就職、そのまま定住……という話は聞きますよね。人の移動が自由になれば当然起きることです。その良い悪いという評価はさておき。
しかし、技能実習生(以下本人)は母国から家族を呼ぶことはできません。正確に言えば、本人の配偶者・子供・両親等を、本人の扶養で日本国内で養う『家族滞在』という在留資格で招くことができません。「貯金が出来たから子供を呼んで日本国内で育てよう」ということができないのですね。
余談ですが、本人も技能実習生で、配偶者も技能実習生のふたりとも技能実習生の夫婦が日本に在留することは可能です。ただ、二人が同じ家で生活することは現実的には少ないでしょう。また、子供を母国から招くことはできませんし、日本国内で妊娠・出産をしても、子供は母国に帰国しなければなりません。
私が出会った実習生の話をします。その実習生はベトナム人女性で、シングルマザーです。夫とは別れ、子供を育てているにも関わらず、単身日本へ出稼ぎに来ているのです。私たち日本人の価値観からすると信じられませんが、ベトナムではそれほど珍しいことではありません。というのも、ベトナムでは「子育ては子の親の両親がするもの」という考えが根強く受け入れられているようです。びっくりですね。それでも、彼女はこう言っていました。将来、日本に子供を招きたい、と。
では、技能実習生はいつまでも家族を呼ぶことができないのでしょうか。いえ、違います。家族を呼ぶことができるルートが用意されています。それが『特定技能2号』です。『特定技能2号』という在留資格を得ることで、家族を呼ぶことが出来ます。今まで家族を呼べなかったのに、家族を呼ぶことができるようになるんです。特権的ですね。そのような特権を得るためには厳しい条件があります。その条件が問題なのです。2023年現在での『特定技能2号』の人数は……12人!日本全国全体でこの数字です。東京大学より狭き門ですね。
このような制度を設計した日本政府には明確な意図があります。それは「出稼ぎの労働力は欲しいが、定住はしないで欲しいから、厳しい条件付きで認める」というものです。働いて税金・社会保障費を収める人は欲しいが、日本に移住する人は国が条件を厳しく設定する。ということですね。入国管理行政は政府の裁量が広いですから、このような恣意的な運用も合法です。余談ですが、マクリーン事件の最高裁判決が根拠となっております。やはり、日本政府のスタンスは「外国人は一定期間だけ働いてその後は母国に帰ってくれませんか」というものです。
この政府の考えは、日本国民の考えとも一致するものだと私は感じています。日本国民は必ずしも外国人に対して寛容ではないでしょう。日本の空気を読む文化は同質性を前提とするものです。表に出てこない本心を汲み取れ、というのは外国人に対して酷でしょう。建前では「日本に来る外国人はすごい」と口で言っても、心のなかには超えられない異文化の壁があるでしょう。ネット上の匿名の意見ではヘイトスピーチが当たり前に見られます。「働いて欲しいが、隣近所には来て欲しくない」というのが本音でしょう。それは、政府の考えと一致しています。政府は微妙な世論を正確に汲み取っていると感じます。
そして終わりに、技能実習制度を廃止してできる、育成就労制度でも家族を呼ぶことができません。廃止をしても変わりません。
2023/11/25
ちょっと違和感がありますよね。そうです。AIによる作成画像です。